自作のショートショート小説やライトノベルを載せていきます。
2016年06月14日 (火) | 編集 |
DSCF0301.jpg
       写真は記事とは関係のないウチのシマポン親子です。

   【 めざせ人間国宝 】
 
 椰子ノ川市に古来より伝わる南蛮踊り・笠出破道(かさではどう)は戦国時代、この地に漂泊したポルトガル船員が地元民に歓待され、酒に酔って踊ったことが由来とされている。

 笠出破道とは奇妙な呼び名だが、これはポルトガル語のcasadefado(カーサデファド)、『ファド(ポルトガル民謡)の流れるレストラン』から来ているという説が有力だ。

 以来、笠出破道は子授けで有名な雲子白神社の夏祭りで踊られてきたが、明治時代に一度途絶えた。

 それを世界の舞踊研究家・真鍋勉蔵氏が再発見し、現代のヒップホップダンス技法も交え、カサデハ流に昇華。自ら家元を名乗るようになったのだ。


「良いですか? ではComeço コメ-ソ(初め)の合図で男女役が互い向き合って。ここでフォルテパッソ、それからエントルノッチ! 笹丘さん、娘役はもっとグラッシアザッメッチ(優雅)に!」
 稽古をつけてくれている師範から厳しい指摘がされた。

「Eu entendo エウェテンド(分かりました)」
 私はポルトガル語で答えて、優雅に(?)跳びはねる。

 いくら元々がポルトガル由来だとしても、何百年も日本で伝承され、しかもいちおう着物を着て踊る日舞と名乗っているのに、何故ポルトガル語でやり取りをする必要があるのか分からないが、これもこの踊りの型なのだろう。

 ひとしきり汗をかいたあと、先の昇級試験の結果が言い渡された。
 舞踏会館にぎっしり詰めかけた弟子たちが固唾を呑んで見守る中、貼り出された紙には私の名がなかった。3ヶ月も後から入門した山田さんは昇級したというのに。

 何故なのかは言うまでもない。私は貢献度が足りないのだ。


 近年カサデハ流はすごい人気だ。家元の方針で、神戸まつりのようなパレード形式のものは元より、徳島の阿波踊りや浅草のサンバカーニバル等にも踊りをアレンジして参加。全国各地で懸命にアピールしている。

 だが、本当に会員が増えているのは別のわけがあるのだ。

「今回、貢献賞を受賞された方はポイントを授与しますので事務局にお越しください」
 そのアナウンスで貢献者は我先にと事務局に向かう。
 その中には練習の場で殆ど見かけない人も混ざっていた。

 実はカサデハ流は入門者を紹介すると、1万ポイントが紹介者に与えられる。このポイントを貢献賞といって、舞踏会館内のレストランや購買部で着物等と交換できるというものだが大手スーパーやデパートとも提携していて、実質1万円分の金券に当たるのだ。入会金が2万円だから還元率はその半分ということになる。

「なんだか納得がいかないわねえ」
 稽古仲間の吉村さんがぼやいた。私も彼女もカルチャーセンターで講座を受け、本格的に踊りを学ぼうと入門した者だ。上の人達の方針には逆らえないが、踊りが目的でない人も混じっているのが気にいらない。

「名取の資格もいちおうは長年稽古に励み師範の推薦があった人となっているけど、実際名取の試験を受けるには、お名前料、会館使用料、家元、支部長、師匠へのお礼、お車代と1千万円位かかるらしいから、お金のある人なら踊りがうまくなくても許可してるらしいわ」
 と、続けた。

「でも、そういう人が経済的に支えてくれるから運営できるんじゃないの」
 私は練習用の着物をたたみながらそう言った。ところが・・・、

「それがね。この流派では名取になると指導者報酬が毎月数十万円も出るらしいのよ。普通は師範の資格をとって、踊りを教えて、お弟子さんから稽古料を頂くものでしょ。名取で多額の報酬っていうのも変だわよ」
 吉村さんはなおも食い下がった。

「いずれにしても下の者が批判できないのが、この世界よ。もし何か言いたければ、もっと練習をしてテレビの素人名人会にでも出て、良い成績を上げれば、おのずと家元特例推薦でお金もいらずに師範になれるって」
「そうね。やるからには大きく、めざせ人間国宝といきましょう」
 
 と、この時は二人で意気投合したのだが・・・、

 数日後、舞踏会館は閉鎖。カサデハ流は消滅してしまった。

 家元が逮捕されたそうで、なんでも罪名は「無限連鎖講(ネズミ請)の防止に関する法の違反」だったそうだ。

               ( おしまい )


  ツイッターのフォロアー募集してます!
 ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑
リンクフリー。大歓迎です!

どのような感想でも頂けると幸いです

 ↓ 押してほしいです。
にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ
にほんブログ村


スポンサーサイト
2013年01月09日 (水) | 編集 |
DSCF4483.jpg
   写真は記事とは関係のないウチのクロちゃんです。


     【 間違い探し 】
   
「大阪の名物がナニワ饅頭からタコヤキに変わっています」
「それから?」
「シンボルタワーが到天楼から通天閣になりました」
「それから?」
「南河内急行が近鉄電車に紀州特急が南海電鉄に、それぞれ変わっています。ついでに阪急電車のシンボルカラーもそれまでの深緑から小豆色になりました」
「それから?」
「大阪で一番賑やかなお祭りが布袋さんから戎っさんに」
「それから?」
「ええ~っと、それから、それから・・・」

 記憶をたどって四苦八苦する俺を審査官が冷ややかな目で見た。

「どうしたどうした、そんなことではとてもこの地区の土地神を任せられないぞ」
 面白そうにやじを飛ばしたのは関西土地神連合の仲間たちだ。

「し、四天王寺の有名な蛙池が亀池に」
「それから」
「あ、忘れてた! 大阪人が大好きな球団がレオポンズからタイガースに・・・」

「今頃、思い出したか。一番大事な事だろうに・・・」
 仲間達があきれたように呟いた。

 簡単な間違い探しでも、矢継ぎ早に答えを要求されるとなかなか出て来ない。
 まして人間がやるように前の絵と比べられるわけではないし、300以上は答えなければならないとなると、窮するのも当然だ。

「ええ~っと、MGM・スタジオ・ジャパンがユニバーサル・スタジオ・ジャパンになっています!」
「それから?」
「大阪市長が若本さんから橋下さんに、政党名も求真から維新に変わっています」
「それから?」
「南の繁華街がお笑いの『吹き倒れ』から食の『食い倒れ』に」
「それから?」

「織田作之助の『夫婦漫才』が『夫婦善哉』に、カツオシ Dの『牡蠣ども!』が『餓鬼ども!』に・・・」
「小さい! もっと大きな変化を答えなさい」


 2012年、12月22日。マヤ歴に書かれた通り、それまでの世界は終わった。
 この日、23日より、まったく新しい世界が始まったのだ。

 しかし、そのことに人は気付かない。
 それもそうだろう。
 記憶も、記載された文献も、建造物や映像データーでさえ、まったく別のものにすり替わっており、誰一人異変に気付くわけがないのだ。

 すなわち、それまでの歴史も名称も、記憶し書き留めることができるのは我々土地神だけ。
 だからこその書記官・選抜試験なのだった。

「やれやれ歴が変わると、我々土地神も苦労するね」
 同僚の一人が試験を終えた俺をねぎらってくれた。
「まったく人間ときたら、ポコタリア国がアメリカという名称に変わった事も気付かないし、日本の最高峰が生駒山から富士山に変わったことにも気付かない。呑気なものさ」
 そういう彼でさえ、昨日までは人間と同じようにネアンデルタール人の姿をしていたことを忘れているようだった。

 いったい何故5600年に一度、世界が刷新されるのか分からない。
 これも宇宙の摂理なのだろうか・・・。

「あまり悩まない方がいいよ」
 試験官が俺の肩をポンと叩いた。


   ( おしまい )

funphotobox182012s1yybpwr.jpg
   この画像はFunPhotoBoxで作成しました。
      
 7月5日に幻冬舎ルネッサンスより
「餓鬼ども!」を発売しました。
(各書店やamazonで販売中)

 イラストはいつもお世話になっておりますブロ友、
MECHAさんの手によるものです。


  ツイッターのフォロアー募集してます!
 ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑
 リンクフリー。大歓迎です!

どのような感想でも頂けると幸いです

 ↓ 押してほしいです。
にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ
にほんブログ村



2010年02月14日 (日) | 編集 |
 
 デコじろう、第2弾です。

 FC2小説で、ショートショートを中心に書いています。
 表紙の下にある【タイトル】をクリックして頂くと小説に飛びます。

屍大名

 短編小説・【屍大名】は、こちらから……

decojiro-20100123-152716.jpg

シナリオ【モノクロームの記憶】はこちらから

decojiro-20100123-133848.jpg

掌編小説・【あなたのレビュー引き受けます株式会社】

 ↓ 押してほしいです。
にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ
にほんブログ村