自作のショートショート小説やライトノベルを載せていきます。
2009年12月09日 (水) | 編集 |

「君んとこの、あの黒いリボンのお世話係はすごいね……」

 寮凰女子フェンシング部・部長の深田泉美は、夏合宿から帰った男子フェンシング部、主将の遠藤からスターパックス・コーヒーでデート中にいきなり、こう切り出された。

 遠藤の話では、真奈美がマネージャーとしてよくがんばってくれたので、最後の日に練習に参加してもらったのだという。
 しかし、女子の中でも小柄な真奈美は男子のパワーについていけず、あっというまにピストの端に追い詰められ、リールに頭をぶつけてしまった。

 「でも、驚いたのはこの後さ……驚いて助け上げようとした部員を制して、フラッと立ち上がった彼女は構えも別人になっていたのさ……」

 「で、どうなったの?」

 「誰も勝てなかった……国体選出の僕以外はね……」
 遠藤はさりげなく自分の自慢も入れた。

 「信じられるかい? マネージャーの女の子にだよ……ところがその後もっと信じられない事が分かった。彼女の様子がおかしいので駆け寄った顧問がマスクを外すと……」

 「気絶していた……でしょ?」
 泉美の一言に、遠藤がうなずいた。

 「やはり、リーグ戦の鍵は彼女になりそうね……」
 深田泉美が呟いた。



 それぞれの夏が終わり、新学期に入っても相変わらず琴里は投資研究会以外の三つのクラブでお世話係をしていたが、このうちバドミントン部では時折、練習試合にも参加できるようになっていた。

 これは琴里の「掃除ばかりでは楽しくないです」というグチに答えてくれたものだが、それを一番喜んだのは同じ栗の花の上級生、室谷加奈子であったかもしれなかった。

 彼女は三年生になるまでずっと、バドミントン部のお世話係に徹してきたのだ。
 それはそれで、たいしたプロ根性ではあるが、人はやはり楽しまなければならない。

 練習試合に参加するようになった加奈子は以前よりずっと明るくなり、笑顔も増えた。

 ラクロス部では、相変わらず芝刈り機の運転に徹していたが、これはなかなか面白く、琴里は別に苦にならなかった。

 問題はチアリーディング部で、ここではいまだに暑苦しいドド君との格闘が続いていた。

 背中に内側から開けられるチャックがついたことで今までのように命の危険を感じることはなくなったが暑い、臭い、重いは相変わらずだったのだ。

 演技のプログラムが変わったことで、最初の数分間我慢すれば、そこから飛び出して諒凰フェニックスのメンバーに交じってチアーダンスを踊れるようになったのだが、そのためには完璧にステップをマスターしなければならず、今まで以上に練習をしなければならなくなった。

 「ハイ、御堂さん少し遅れてるわよ! 皆との呼吸が合わないようなら、ずっとドド君に入っていてもらいますからね!」
 などと言われれば、授業中ですらイメージトレーニングを続けなくてはならなかった。

 しかし、琴里がこのようにチアリーディング部のお世話係を熱心に続けるようになった結果、本来巻き込まれて、このクラブに所属させられていた真奈美は解放されてフェンシング部に集中出来るようになっていた。
 ただし――。

 「ハイ、そこでパラード! ダメね倉橋さん、まったく止められてないじゃないの!」

 一時はリーグ戦を勝ち抜く為の秘密兵器と目された真奈美だったが、このところは全く信頼をなくしていた。

 いくら練習試合に参加させても、本来気の弱い真奈美の場合、やはり格闘競技にむいていないのか、全く反撃できなかったのである。

 「それじゃあ、あの時の強さはいったい何だったっていうのかしら……」
 部長の深田泉美は残念がったが真奈美の性格までは治せなかった。

 もしかしたらと、ペットのカラスが死んで以来髪に巻いている、黒いリボンをものは試しと無理やり取ってみたりしたが、子供のように泣きだす始末で、強くなるどころか、より以上に使えなくなるという有様だった。

 仕方なく、三年生を中心としたメンバーでリーグ戦を戦い、なんとか入れ替え戦に持ち込んだが、一部から入れ替え戦に出場する学校が去年の一部リーグ準優勝校、彩都女学館とあっては万事休すだった。

 その上、泉美自身にも問題があった。先のリーグ戦で、痛めた右足の回復が遅れているのだ。
 考えれば考えるほど、頭が痛くなった。

 そこで泉美はもう一度、真奈美の覚醒にかけてみることにした。分かっていることは気絶させれば強くなるという事だったが、まさか試合中に気絶させるわけにもいかない。

 悩みぬいた末、泉美が出した結論は催眠術だった。



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2009年12月09日 (水) | 編集 |
 
 現在は栗の花学園が使っている西側の旧校舎。
 その屋上に続く四階には機械室と倉庫がある。

 この倉庫の中に《諒凰・現代不思議研究会》なる学園非公認団体が陣取っていた。

 不気味な団体で、その存在は文化祭の時に周囲を驚かす奇抜な企画を催すことで知られていた。
 あまり関わり合いを持ちたくない人達と思われており、栗の花の生徒達も、屋上を利用する際でも務めて目を合わさないようにしている程だった。

 不思議研究会、四人のメンバーはいずれも妖艶で、危険な匂いのする連中だったが、中でも部長の久慈菜々美(くじななみ)はタロットと催眠術の名手で、魔女だという噂があった。

 「こ、こんな所にどうしてボクを連れて来たんですか? ここはボク達だってめったに近づかない魔境なんです! もし占いが目的なら……」

 「シッ!」

 恐怖の為、いつになく口数が多くなった真奈美の口を泉美が押えた。

 「外の人、中へ……」
 倉庫の中から声がして、カーテンで覆われた扉が開いた。

 「ウッ!」
 真奈美だけでなく、泉美までも思わず息を飲んでしまった。

 ハーブの香がただよう部室は薄暗く、怪しげな調度品に囲まれたテーブルには紫色のランプが一つだけ置かれていた。
 よく見るとそのテーブルを囲んで四人の女子高生が全員、黒いマントを身につけて座っていたのだ。

 「私が代表の久慈菜々美です」
 ベールを目深にかぶった、ひときわ妖艶な少女が口を開いた。

 「じ、じ、実はあなたが催眠術の名人と聞いて、この子に本当の実力が発揮出来るよう、暗示をかけて欲しいの……」

 泉美はそれだけ言うと後ろに隠れていた真奈美をグイッと前に差し出した。
 菜々美がクッツクッと笑いながら立ち上がり、真奈美の頬をやさしくなでた。

 「ヒェッ!」
 思わず真奈美は目を閉じた。

 「栗の花の子ね。この子が試合で勝てるように暗示を? 死ぬまで喜んでお掃除するとか、あなたに従純に尽くすようにではなく?」
 ガタガタと震える真奈美にハーブの粉を振りかけながら、菜々美は泉美に確認した。

 「そ、そうよ。私達フェンシング部は、この子の支配を企んでいる訳ではないわ。無意識な状態では、もの凄い才能を発揮するこの子に、普段の試合でもその実力を発揮して欲しいだけなの……」

 「なるほど……そういう事なら引っき受けましょう!」
 急にトーンの変わった菜々美がベールを脱ぎ棄て、催眠術をかける為、腕まくりをした。

 「だ、大丈夫かしら……」
 泉美はホッとすると同時に、その軽さに一抹の不安を覚えた。


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2009年12月09日 (水) | 編集 |

「今日はフェンシング部、入れ替え戦の応援の為に相手校の彩都女学館に乗り込まなければなりません!」
 チアリ―ディング部長の山名蓉子がフェニックスのメンバーを前に高らかに宣言した。

 「弱小クラブであるフェンシング部は、わが校も殆ど期待しておらず、これまでチアリーディング部が応援に出ることは稀でした」

 「しかし、今回は入れ替え戦という大事な試合であるばかりでなく、補欠とはいえ、我がチアリーディング部でもお世話係をされていた、六代目ドド君の倉橋真奈美さんがメンバーに加わったという情報が入りました」

 「そこで、フェニックスとしても急遽、応援を行うことに致しました。そこ、シャキッとする!」
 居並ぶ諒凰の制服の後ろで一人、栗の花の制服姿の琴里に向かって蓉子が叫んだ。

 「せやけど、これ重たいんですけど……」
 琴里が不満を述べた。背中に担いだ大きなズタ袋からはドド君の頭がはみ出している。

 「ドド君の演技、十分間追加!」
 蓉子が演出を担当する部員に演技の書き換えを命じた。

 「わぁあー! シャキっとします、します」



 川崎市にある彩都女学館は、幼稚園から大学まであるエスカレーター式の学園の高等部である。
 スポーツ教育にも力を入れており、ことにフェンシング部は全国大会でも常連だった。

 それが、あろうことか今年のリーグ戦では主要メンバーが風邪や肉離れで不振が続き、ついには屈辱の入れ替え戦に回ることになってしまった。

 その為、今回の一戦は絶対に負けられない戦いと位置づけられ、学園をあげての応援体制がとられていた。

 「完全なアウェーやないですか……」
 会場の彩都女学館・体育館に入った途端、琴里が呟いた。

 諒凰から応援に駆け付けた生徒もいるにはいたが、その数はどう見ても数十人。
 対して二千人の収容人員を誇る体育館の残り全てが彩都・フェンシング部の応援団だった。

 「それでも、負けてはいられませんわよ! チアリーディング部はこれより戦闘態勢にはいります!」
 「良いですか、皆さん…… 戦闘態勢にはいりますわよ!」
 と、山名舞子も続いた。

 着ぐるみの琴里を除く全員が「オーッ」と拳を振り上げた。

 彩都女学館の方はすでに盛り上がっていて、部員三十人からなるカラフル・キャッツが一糸乱れぬチアーダンスを披露していた。

 時折、《ミュージカル・キャッツ》を思わせる、愉快なダンスが入るかと思えば、次の瞬間には中国の雑技団のようにアクロバティックな動きで観客を魅了する。

 ことにカラフル・キャッツを率いるリーダーの演技は華麗で琴里などは思わず(ハァ~、こら格好ええわ~)と、見とれてしまうほどだった。

 「ハイハイ、では、こちらも参りますわよ!」
 山名蓉子がポカンと見とれている琴里の頭にドド君をかぶせた。

 ドド君は少し改良され、頭が取り外せるようになっていたのだった。

 「まずは、ドド君が会場を走り回って注目を集め、それから音楽と共に、練習したパートを演技します。ドド君がコミカルなダンスで場をなごませた後で私達の演技となります。もし、会場に受けたとしても、調子に乗って変なパフォーマンスは見せないように」
 そう言ってドド君を会場に送り出した蓉子だったが……。
 「でも心配だわ……あの子、大阪娘だから……」
 と、呟いた。蓉子の頭の中では、どうしてもテレビで見る関西芸人がだぶるのだ。

 もっとも琴里の方はパフォーマンスを見せる気など、全くなかった。

 早いとこ、ドド君から解放されて同室の先輩、真奈美を応援してあげたかったのだ。

 それなのに――。

 ステップ1、ステップ2と、ターン、キックと、ここまで演技したところでバランスを崩し、派手に転んでしまったのだった。

 会場全体がドッと沸いたのは、ドド君の首を追いかける琴里の慌てようがとても、おかしかったからだった。



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2009年12月09日 (水) | 編集 |

蓉子がビクッと体を強張らせ、「あの子ったら~ もうドド君のチャックはハンダづけですわね!」と、怒りで顔を歪めた。

 「ハンダづけですわね……」
 山名舞子も続けた。

 しかし、ほんの一瞬にして姉妹は笑顔を作り直し――。

 「少し出番が早くなったけれど、フェニックスまいりましょう!」
 と、GOサインを出した。

 琴里もまた転がって行ったドド君の首を追いかけるのを諦め、着ぐるみを脱ぎ棄てる。
 すでに着込んでいたフェニックスのユニフォームでチームに合流した。

 山名蓉子がにこやかに笑いながら、「チアーダンスでも失敗したら、一生ドド君に閉じ込めますわよ」と恐ろしいことを言った。

 この脅しが効いたのか、琴里は必死でチームに溶け込んだ。



 「痛たたた……」
 チアーダンスが何とか無事に終わり、先程の転倒で痛めた足をさすりながら、転がったドド君の頭を回収に来た琴里の前に、フェンシングスーツを着た少女が立っていた。

 「琴里ちゃん、これドド君の頭……」

 「あっ、真奈美先輩……」
 拾ってくれたのは真奈美だった。

 「応援に来てくれたんだね。今日は出れるかどうか、わかんないけどガンバルからね」
 そういって引き揚げて行った真奈美はずいぶん明るく見えた。

 (なんや、結構楽しんでるやん)

 元々、無断でリボンを交換したことから、入ることになってしまったフェンシング部だったが、琴里は少し安心した。

 フェンシングの団体戦はオリンピックで有名になった個人戦とは勝利条件が異なっている。
 通常三人で行われ、総当たり戦となっており、ひと試合3分で5ポイントを上げるとその時点で一勝となる。そして、先に五勝をあげたチームが勝利するというルールである。

 それだけに、例えば最も実力のあるものを先将に回すといった、他の格闘技の団体戦に見られるような奇策は使えない。
 すなわち、出場メンバーは予想通りである事が多いのだ。

 が、今回の諒凰の場合は――。

 「なんですって! 諒凰は部長の深田さんが出ないっていうの?」
 そういった驚きの声が彩都女学館側からあがった。

 諒凰は、足の具合がおもわしくない深田泉美に代えて補欠の真奈美をピストに送り出したのだった。
 「我がチアリーディング部の、六代目ドド君を出してくれたのはうれしいですが、どうやらフェンシング部はこの試合を捨てたようですわね……」
 山名蓉子はそう言って、少し複雑な表情をした。

 「けど、真奈美先輩はなんか……いつもとは雰囲気が違うような……」
 琴里が指摘した通り、今日の真奈美は随分落ち着いていた。

 会場を見渡せる余裕があるのか琴里に手を振って微笑んだのだった。

 真奈美は、今やトレードマークとなった黒いリボンを、もう一度しっかりと結び直してマスクを付けた。

 驚いたことに、その左肩には、昨日まで泉美が付けていたキャプテンマークが貼り付けられていた!

 お互いにサリュ(挨拶)を交わし、位置に着く。
 一瞬の静寂の後、主審が「アンガルド!(かまえて)」「アーレィ!(はじめ)」の号令を掛けた。

 試合は圧巻だった。

 黒いリボンをなびかせた真奈美は、国体常連の相手校・主将に対し、一歩も引けを取らない。
 ピストの上を縦横無尽に舞いながら相手の強力なアタックにも全くひるまず、パラード・からリポストを放つ。
 追い詰められた相手が、警戒して攻撃をためらえばアタック・サンプルで得点する。

 終わってみれば、なんと相手に一ポイントも与えない圧勝だった。


 結局、真奈美が一人で三勝を挙げたこともあり、入れ替え戦は諒凰の勝利で終わった。
 諒凰フェンシング部は、見事念願の一部リーグ復活を果たしたのだった。

 ちなみに諒凰が勝利を収めたことで、山名蓉子の怒りも収まり、ドド君はハンダづけを免れた。

 なお、フェンシング部では、このリーグ戦を以て三年生が引退し、真奈美はお世話係から正式に部長に昇格した。
 フェンシング部が体育会系ということもあり、理事会からも反対はなく、対外的にも栗の花が諒凰の分校という事なので問題はなかった。


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2009年12月09日 (水) | 編集 |
 
「それにしても……人に頼まれると、イヤと言われへん真奈美先輩に部長が務まるんやろか……」
 琴里がちょっと心配そうに呟いた。

 と、いうのも――。

 正式にフェンシング部員になった事で、解放されたはずのラクロス部・グラウンド整備《ライン引き》に、この日も真奈美は琴里と共に参加しているのである。

 「ボクは琴里ちゃんと一緒に仕事するのが楽しいから、いいんだよ」
 と、真奈美は笑うが、栗の花学園のボランティア活動にしても、トイレ掃除や駐車場の草むしりといった、他の人のやりたがらない仕事ばかりが彼女に回されているように琴里には思えたのだ。

 そこを指摘すると、真奈美は首を振りながら「それはボクじゃないよ……クラスの人達が自分のイヤな事を押しつけているのは彼女なんだよ……」と、炎天下で草むしりをしている少女の方を見て、寂しそうに答えた。

 真奈美が視線を向けた少女、それは小坂直子だった。

 父が会社の取締役を追われた彼女は諒凰から栗の花に転籍していたが、それ以来、魂をなくしてしまった感のある彼女は、保護者ともいうべき佐倉の目が行き届かない二年生のクラスの中で、ある種のイジメにあっていたのだ。

 「小坂さんが何でもすんなり引き受けるんで、クラス中の人がイヤな仕事を全部、小坂さんにまわしてるんだよ……彼女、嫌われていたから……」
 「嫌われてたんは分かるけど……なんか、それイヤな感じや……」
 琴里の顔が曇った。

 確かに諒凰の生徒会書記をしていた頃の彼女は、風記委員会を支配など、栗の花の生徒にとって迷惑な存在であったかも知れないが、力をなくした直子に陰湿な復讐をするのは許せない気がしたのだった。

 「なんか助ける方法はないんやろか……」
 琴里のこの一言に、真奈美の表情が輝いた。

 「そうだ! もしかしたら、助けられるかもしれない……」

 真奈美が、琴里と小坂直子を引き連れてやって来たのは西校舎四階の魔女の巣窟だった。

 「帰して! まだグランドの草むしりの仕事が残ってるの……」
 そう言って渋る直子を、二人でなんとか連れて来たのだった。

 「おやまあ、これはこれは……フェンシング部の新キャプテンではありませんか……」
 紫色の不気味なランプに照らされた、妖艶な魔女・久慈菜々美が三人を迎えた。

 「アッ、その節はお世話になりました」
 真奈美が、あまりにも世俗的な礼を述べた為、場の雰囲気が明るく変わってしまった。

 それを感じた菜々美が、お香を山ほど焚いて不思議な雰囲気を取り戻す。

 「まあ、そちらは前の生徒会書記・小坂さんではありませんか……すると、今日の依頼は彼女の事ですね?」

 「わっ……スゴい!」
 琴里は感心した。もしかすると、菜々美は本当に魔女かもしれないと思ったのだ。

 「それで、あなたは彼女をどのようにしたいと考えているのですか? 以前の復讐の為に今以上に従純なロボットに? それとも亡くしてしまったペットの代わりに?」
 菜々美は以前、深田泉美から真奈美のペット、カー君の事を知らされていたのだ。

 「違います! ボク達は、彼女がもと通り元気になってくれればそれでいいんです」
 「元気に? でもそうなると……彼女はまた風記委員会を操り、あなた達栗の花の生徒を悩ますことになるかも知れませんよ……」 
 「それでもいいんです!」

 (いや、良くないって……)琴里は心の中で反論した。

 しかし、真奈美は真剣だった。

 「今までは御両親の保護の下で生きてきた彼女だったけど、これからは一人で道を切り開かなくてはなりません。それなのにこんな状態ではとても生きていけないと思うんです」

 (やっぱり、真奈美先輩は変わった……)

 琴里はそう思った。


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