自作のショートショート小説やライトノベルを載せていきます。
2011年05月23日 (月) | 編集 |
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この表紙は「エア新書」で作成したものです。

☆ この小説は安倉あんさんが提案されたカモニハシ小説の企画にもとづいて書いております。(^^;)




    【 化石 】


   カモノハシは、不思議な動物だ。
   オーストラリアにのみ生存する卵生(!)の哺乳類で、くちばしを持っている。

   以前よりその存在は哺乳類の起源を解き明かす、生きた化石と言われていたが、
   最近ではゲノム解析によって、さらに奇妙さが浮き彫りになってきた。


「おっと、気をつけて掘り出してちょうだい。この時代のカモノハシの化石はものすごく貴重なんだから」

  私は現地スタッフに命じ、慎重に周囲の岩盤から化石を採集させた。


   カモノハシの遺伝子は爬虫類、鳥類、哺乳類のそれぞれを組み合わせた構造になっている。
   つまり遺伝子レベルでは、もはや哺乳類に含む事すら疑問符がついているのだ。


「やりましたね、博士。これで大学も大幅に予算をアップしてくれますよ」
 助手の和子さんが、うれしそうだった。


   カモノハシの起源は三畳紀と言われている。
   しかし、これまでこの時代の完璧な化石は見つかっていなかった。
   それが、このクィーンズランド・ローガン郊外の炭鉱跡地で大量に見つかったのである。
   和子さんが大喜びするのも当然といえた。

   だがここは古生物学の専門家に、しっかり鑑定をしてもらう必要があった
   私自身の専門分野は考古学だったからだ。


「先生、那須博士が到着されました」
 もう一人の助手、下出(しもいで)君が那須博士を連れて来たようだ。

「こんにちは、那須博士。こんな僻地までよくおいで下さいました・・・」
 そう言ってふり返った私は絶句した。

 古生物学の教授ということで、かってに老人を想像していたのだが、現れたのはジャニーズ事務所所属ではないかと思えるイケメン。

 三十五歳・独身、彼氏いない歴○十年。考古学一筋に打ち込んで来た私には眩しすぎる人物だった。

「あなたが村木博士ですね。ケンブリッジ大学、古生物研究所の那須です。よろしく」

 それまでクールな感じだった那須が、突然、満面の笑顔を浮かべ、私の手をにぎった。

 ピ~ッ。

 私の頭の中で、何かがはじけた。

「よ、ヨヨッよろしく」

 顔を真っ赤にしてそう言うのが精いっぱいだった。
 困った。こういう人物にはまったく免疫がない。
 これから二週間、ともに作業する自信が私には持てなかった。


 しかし・・・。


「な、那須博士は、なぜこの場所から、カモノハシが大量に見つかったとお考えですか?」などと、私がおバカな質問をしてしまった瞬間、その懸念は払しょくされた。


「そりゃあ、ここが炭鉱だからですよ」

「ハイ?」

「だって、カモノハシは単孔類ですからね。単孔類、たんこう、炭鉱類、バンザーイ。ウハハハハ」
残念なことに、イケメン古生物学者・那須はただのお調子者だった。

「クックックッ・・・」

 那須は満足げに含み笑いをしながら、タバコを取り出し、いっぷくとばかり火をつけようとした。

パコ~ン!

「このオタンコナス(炭鉱)+(那須)! 坑道で火を付けちゃだめでしょうが!」
(ガス爆発の危険があります)」

 私はオヤジギャグを発しながら、思わず手にしたスコップで、那須の頭を殴っていた。

 よかった。これなら二週間、一緒にやっていけそうだ。

 面食らった表情の那須をしり目に、私はホッと胸をなでおろした。


    (おしまい)

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安倉あんさんによる公式表紙。
安倉さんの「【それぞれの】あなぐら★リターンズ【あなぐら事情】はこちら・・・。
 http://novel.fc2.com/novel.php?mode=tc&nid=80885



 あとがき & カモノハシについて・・・
 

 それにしてもカモノハシって不思議ですよね。

 本文中に出てきた単孔類というのは肛門・尿道・生殖口が一つになっているというもので、これは鶏などと同じような仕組みです。
 
 また、遺伝子の中に、爬虫類、鳥類、哺乳類の系統がみんな入っています。


 その上、性染色体が5対もあるんです。

 人間だと男がXY、女がXXでしょう。

 カモノハシはオスが、XY,XY,XY,XY,XY

       メスが、XX,XX,XX,XX,XX なんです。


 しかも化石が殆ど見つからないし、見つかっても完全なものが出ない。

 これはもしかしたら、カモノハシは宇宙人が合成した人工生物で、

 人類に対する謎かけなのではないかと本気で考えちゃいますよ。


 ただし、別の戦慄的な可能性もあります。

 それはウイルスベクターのいたずらという可能性です。

 他の生物の遺伝子をウイルスが運んできて感染させ、生物の遺伝子の組み換えを行ってしまうというものです。

 この可能性については、私は以前「種のたそがれ」という小説で書いたことがあります。

 もし、興味のある方はFC2小説内にありますので読んでやってくださいませ。

 

 とにかくカモノハシというこんな不思議な生物が絶滅しないように、
 
 人類としてもしっかりと守ってやりたいものですね。



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